大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和60年(合わ)10号 判決 1985年10月24日

被告人 小出芳子

昭二一・三・一八生 無職

主文

被告人を懲役九年に処する。

未決勾留日数中一八〇日を右刑に算入する。

押収してある出刃包丁一丁(昭和六〇年押第二九八号の1)を没収する。

理由

(犯行に至る経緯)

被告人は、昭和三六年三月千葉県市原市内の中学校を卒業後、種々の職業を転々とし、覚せい剤取締法違反及び現住建造物等放火の各罪により昭和五六年四月一〇日から栃木刑務所に服役したが、右服役中、覚せい剤中毒後遺症による心情不安定のため被害念慮の出る状態であると診断され、焦燥感が募り、不眠を訴え、自傷行為をしたり、不食を続ける等の症状がみられたことから、八王子医療刑務所に移送されて治療を受けたことがあり、右症状が軽快し精神状態も安定したとして栃木刑務所に還送された後も引き続き向精神薬等の投与を受けていた。

被告人は、昭和五九年一一月三日刑期満了により栃木刑務所を出所して上京し、東京都千代田区内のホテルに投宿したが、その夜は約四年ぶりに刑務所を出て環境が急変したことなどから興奮して寝つかれず、結局ベツドに腰掛けたまま一睡もしないで夜を明かし、翌四日午後一時ころ同ホテルを出て国電品川駅に赴き、同駅付近のデパート等で果物や安全剃刀、絆創膏等を購入したうえ、午後一時四五分ころ前日に宿泊の予約をしておいた同都港区高輪四丁目一〇番三〇号所在の品川プリンスホテル一六階一六三九号室に入つた。

その後、被告人は、同室において時間を過ごしていたが、そのうち突然恐怖感に襲われ、自己の身を守るため先に購入していた安全剃刀二枚を取り出し、刃の部分を合わせ、柄に絆創膏を巻いて固定したところ、少し落ち着いたものの、そのうち再度恐怖感に襲われたため、右安全剃刀では足りないと考え、午後五時過ぎころ前記デパートに行き、刃体の長さ約一七センチメートルの出刃包丁一丁(押収番号略、以下同じ)を購入したうえ、同室に戻つた。

(罪となるべき事実)

被告人は、

第一  同日午後五時五〇分ころ、前記品川プリンスホテル一六階一六三九号室の自室にいるうち、いよいよ恐怖感が募るとともに不安焦燥感が強まり、自室のドアを開けて廊下の様子を窺つたところ、同ホテル一六四三号室に投宿していた大串とも子(当時三三歳)が自室の方向に歩いて来るのを認め、咄嗟に殺意を抱き、前記出刃包丁を取り出して右手に持ち、既に自室の前を通り過ぎ右一六四三号室の前で同室のドアの錠を開けようとしていた同女に近付き、その背後からいきなり右出刃包丁で同女の胸部、腹部、背部等を突き刺し、よつて、同日午後六時二〇分ころ、同都品川区北品川三丁目三番七号所在の第三北品川病院において、同女を大動脈、左肺動静脈、心、肺などの損傷を伴う背部左側の刺創群によつて生じた失血により死亡させて殺害し、

第二  業務その他正当な理由による場合でないのに、同日午後五時五〇分ころ、右品川プリンスホテルにおいて、刃体の長さ約一七センチメートルの前記出刃包丁一丁を携帯したものである。

なお、被告人は、右各犯行当時、覚せい剤中毒後遺症の症状再燃による被害妄想、情動不安定状態による精神障害のため、心神耗弱の状態にあつたものである。

(証拠の標目)(略)

(累犯前科)

被告人は、(1)昭和五五年六月二四日東京地方裁判所で覚せい剤取締法違反の罪により懲役一〇月(三年間執行猶予、昭和五六年四月九日右猶予取消)に処せられ、昭和五九年一一月二日右刑の執行を受け終わり、(2)昭和五六年三月三日同裁判所で現住建造物等放火の罪により懲役三年に処せられ、昭和五九年一月二日右刑の執行を受け終わつたものであつて、右各事実は検察事務官作成の前科調書及び電話聴取書によつてこれを認める。

(法令の適用)

被告人の判示第一の所為は刑法一九九条に、判示第二の所為は銃砲刀剣類所持等取締法三二条三号、二二条にそれぞれ該当するところ、各所定刑中判示第一の罪について有期懲役刑を、判示第二の罪について懲役刑をそれぞれ選択し、判示の各罪は前記の各前科との関係でそれぞれ再犯であるから、いずれも刑法五六条一項、五七条により(判示第一の罪の刑については同法一四条の制限内で)再犯の加重をし、判示各罪は心神耗弱者の行為であるから、いずれも同法三九条二項、六八条三号により法律上の減軽をし、以上は同法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により重い判示第一の罪の刑に同法四七条但書の制限内で法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役九年に処し、同法二一条を適用して未決勾留日数中一八〇日を右刑に算入することとし、押収してある出刃包丁一丁は判示殺人の用に供した物で被告人以外の者に属しないから、同法一九条一項二号、二項本文を適用してこれを没収し、訴訟費用は、刑事訴訟法一八一条一項但書を適用して被告人に負担させないこととする。

(被告人の責任能力について)

一  弁護人は、被告人は本件犯行当時、環境の急激な変化、向精神薬の投与の中断及び極度の疲労等の条件が重なつたため、急激な妄想に襲われ、行為の是非善悪を弁別する能力が欠如するか、或いは著しく低下していたのであつて、心神喪失或いは心神耗弱の状態にあつた旨主張し、これに対し、検察官は、被告人が、本件犯行当時妄想若しくは妄想的気分にとらわれたということ自体疑問の余地があり、むしろ本件犯行は基本的に刑務所志願の動機によるものではないかと推認されるが、仮に被告人が妄想状態に襲われたことがあつたとしても、被告人が本件犯行当時、是非善悪を弁別し、これに従つて行動する能力を全く欠いていたものとは到底認められない旨主張しているところ、当裁判所は、判示のとおり心神耗弱を認めたので、この点について補足して説明する。

二  前掲の関係各証拠によれば、以下の各事実が認められる。

1  被告人は、前記認定のとおり、覚せい剤取締法違反及び現住建造物等放火の各罪により昭和五六年四月一〇日から昭和五九年一一月二日までの間栃木刑務所等で服役したが、右服役中、昭和五六年四月一七日の精神科医師による診察では、覚せい剤中毒後遺症による心情不安定のため、被害妄想はないものの被害念慮が出る状態であると診断されていたところ、更に昭和五七年一月下旬ころから焦燥感が募り、不眠を訴え、不食を続け、自傷行為に及ぶなどの症状を呈したため、同年四月六日八王子医療刑務所に移送され同所での治療を受けた結果、右症状も軽快し精神状態も安定したとして、昭和五八年九月一三日栃木刑務所に還送され、その後の診察でもほぼ一貫して精神状態は安定している旨診断されており、殊に昭和五九年一〇月一六日の診察の際には、心情は極めて安定しており、将来は薬物なしでも就労してゆける旨診断されていたものの時に焦燥感、不眠、頭痛、疲労感等を訴えることがあり、結局出所時まで引き続いて向精神薬等の投与を受けていた。

2  被告人は、同年一一月三日栃木刑務所を出所して上京し、その夜はホテルに投宿したが、約四年ぶりの出所で環境が急変したことなどから興奮して寝つかれず、ベツドに腰掛けたまま一睡もしないで夜を明かし、その間翌四日午前一時か二時ころには、衝動的に髪に差していたヘアピンを一本抜いてその先で両腕を強く引つ掻くようにして傷つけた。

3  被告人は、同日午後一時四五分ころ前記品川プリンスホテル一六階一六三九号室の自室に入るや、自分の顔を見るのが怖いと感じ、同室に備付けられていた鏡台にバスタオルを掛けてこれを隠し、自分の姿が映らないようにしたうえ、同室内で時間を過ごすうち、急に何かされそうな気がして怖くなり、「何かあつたらやり返さなければならない。」などと考え、自分の身を守るため、先に購入していた安全剃刀二枚を重ね合わせて兇器を用意した。

4  被告人は、その後暫くして再度恐怖感に襲われたため、右安全剃刀だけでは足りないと考え、同ホテル付近のデパートへ行き先端の鋭利な出刃包丁を選んで購入し自室に戻り、暫くの間ぼんやりとしていたが、そのうち「何故か判らないが体中がいらいらして仕様がない」ので、自室のドアを開けて廊下の様子を窺い、偶々自室の方向に歩いて来る初対面の被害者の姿を見るや、衝動的に同女を殺さなくてはならないと思い、判示のとおり被害者を殺害した。

5  被告人は、被害者が動かなくなつたのを見て「気持ちがスーツとし」、怖くなくなり、焦燥感も治まつたことから、同女を見つめていたが、その後被害者の投宿していた部屋の鍵を取つてドアの錠を開け、同室内の様子を見た後、本件犯行を目撃した宿泊客からの通報を受けて駆けつけた同ホテルの従業員から、「この人(被害者)のお連れさんですか。」と尋ねられるや、かなり興奮した様子で「私は知らないよ。この人が悪いんだ。私は悪くないんだ。」などと言つた。

これらの各事実の中には、被害者は被告人とは全くの初対面であり、偶々被告人の部屋の前を通つた宿泊客にすぎず、被告人が被害者に殺意を抱くについての首肯し得べき動機は全く窺われないこと、本件殺人の手段・方法は執拗かつ残忍であること、被告人の本件犯行前後の言動には、通常人に理解し難いものがあることなど本件犯行当時被告人の精神状態が異常であつたことを推測させるものがあり、以上を総合すると、被告人は、同年一一月三日の夜には、出所による環境の変化、向精神薬の投与の中断等の要因が重なつて極度の不眠状態となり、かなりの精神的緊張状態にあつたが、更に本件犯行当時には、不眠、不安焦燥状態が昂じ被害的妄想気分が生じていたものと認められる。

なお、被告人は、当公判廷において、本件犯行前、前記のような恐怖感に襲われたことはなく、本件犯行は刑務所に入るためにしたものである旨供述し、その理由として、世間は煩わしいこと、刑務所に入れば何も考えずに済むこと、刑務所に入つて過去のことを忘れたいということなどを挙げているが、被告人の捜査段階における供述中には、刑務所の方が暮らしやすいとか、刑務所にいる方が私には良いなどと述べている部分はあるものの、明確に刑務所に入るために本件犯行を犯した旨述べているものはなく、かえつて、被告人の検察官に対する昭和五九年一一月一五日付供述調書においては、検察官の「刑務所に行くつもりだつたのか。」との問に対し、「そんな事も考えてなかつた。ただ殺しただけ。」と供述し、判示認定のような恐怖感、不安焦燥感に襲われて衝動的に本件犯行に及んだ旨供述していること、及び被告人は当公判廷において過去における覚せい剤使用の事実や前刑服役中に向精神薬等の投与を受けていた事実を殊更に秘匿しようとして虚偽の供述をし、自己の精神状態に関する質問に対しては極めて敏感に拒絶的・反抗的態度を示すなど自己の精神状態が正常であつたことを印象付けようとしていること等に照らし、到底措信し難い。(なお、医師金子嗣郎作成の精神鑑定書中にも、被告人が刑務所に入りたくて本件犯行に及んだ旨述べたとの記載部分もあるが、他方、「今回も刑務所に戻りたかつた」かとの質問に対し、「そこまで考えていなかつた、殺される前に殺したかつた」と述べたとされている部分もあるのであつて、金子医師自身も「世間の煩わしさから逃避するという抑うつ気分も否定できないが、「殺らなければ殺られる」という被害的妄想気分が事件の主因である」と判断している。)

三  しかしながら、被告人が妄想気分に対処するため、安全剃刀二枚を重ね合わせて兇器を用意し、更に出刃包丁を購入したことは合目的な行動であると言えることのほか、右各証拠によれば、被告人は、本件犯行当時犯行を目撃した宿泊客が被害者に「早く、早く」などと声を掛け同女を助けようとしていたことを認識しており、更に犯行後宿泊客に対し、「何見てんだよ。」と言い、宿泊客からの通報を受けて駆けつけたホテルの従業員が、「何もしないから包丁をよこしなさい。」と言つて被告人の握つていた包丁を取り上げようとするや、被告人は、「やだ、やだあ。」などと言つてこれを拒絶したこと、その後被告人は、自室に入ろうとしたが、鍵が掛つてドアが開かなかつたことから、ホテルの従業員に対し同室を指さして、「この部屋を開けてくれ。」と言つてドアを開けさせ、同室内の洗面所で血の付着した両手を洗つていること、被告人に自殺されるのをおそれたホテルの従業員が電話で、「おかげんどうですか。何かありましたら、声を掛けて下さい。」などと話し掛けるのに対し、被告人は、落着いた様子で「別に何もないわよ。何かあるなんて何のこと。」などと答えていること、ホテルの警備員が被告人の隙を見てその左手首付近を掴んで廊下に引つ張り出そうとするや、被告人は、右手に持つていた包丁で同人の左上腕部を突き刺し、更に同人に押し倒されるや、「痛えな。馬鹿野郎。」と言つたことなどが認められ、これらの事実に徴すると、被告人は、犯行時及びその前後において、周囲の状況を認識し、かつ、右状況に的確に対応した行動をとつており、見当識は十分に保たれ、その意識は清明であつたことが明らかであり、加えて、被告人は、捜査官の取調べに対し、犯行に至る経緯及び犯行状況等について詳細な供述をし、しかもその内容は他の関係証拠ともよく符合しており、犯行時及び犯行前後の記憶をかなり正確に保持しているものと認められる。

四  更に、医師金子嗣郎作成の精神鑑定書及び同人の当公判廷における供述によれば、被告人に対する精神鑑定の結果は以下のとおりである。

1  被告人には、身体所見及び各種身体検査結果より器質性精神障害の存在は否定される。

2  被告人には、本件犯行前に妄想気分が生じており、本件はその被害的妄想気分に従つての殺人であつて、精神分裂病様の症状であるが、分裂病様の情意障害のないこと、病識に近いものを持つていること、妄想気分が短期間に消失していることなどから、精神分裂病は否定される。

3  被告人の知能レベルは、心理検査により境界線領域の知能低下が認められるが、社会生活に適応できる能力や一般常識は持ち合わせている。

4  被告人は、元来人格形成が未熟であつたが、覚せい剤を使用することにより、精神病質的性格傾向が顕在化してきたものと思われ、前刑の服役中には種々の性格偏倚、例えば易怒、粗暴、爆発性の性格があり、抑制力の欠如から些細なことで興奮し短絡的行動に及んでいること、心理テストの結果においても被告人は社会性が低く、忍耐心や遵法性に乏しいため、欲求不満場面において短絡的解決手段を取り易い傾向が認められる。

5  被告人は、前刑服役中、精神科薬物療法を受けることにより比較的安定した状態のときもあつたが、覚せい剤中毒による性格変化を基盤として再発を繰り返す病像からして治癒した状態にはなかつたと考えられる。

6  本件は、約四年ぶりの出所という環境変化、二年余りにわたつて服用していた向精神薬の中断、不安心理等の要因が重なり、覚せい剤使用時に出現した被害妄想によく似た症状が再現され殺人事件を引き起こしたが、その行動パターンには被告人の短絡的で反社会的な性格傾向もかなり影響していると考えられる。

7  被告人には、本件犯行当時その的確な行動、正確な記憶からして、いわゆるせん妄、錯乱等の意識障害はなかつたものと考えられる。

そして、右鑑定は結論として、被告人は、本件犯行時覚せい剤中毒後遺症の症状再燃による被害妄想、情動不安定状態にあつたとしている。

なお、弁護人は、右鑑定書は客観的根拠に基づかない主観的、恣意的な判断が多く、その内容は不当である旨主張するけれども、右鑑定書の記載、証人金子嗣郎の当公判廷における供述によつて認められる鑑定の経過等に照らすと、右鑑定書にその信用性を否定しなければならない点は特に認められず、合理的なものとして十分信用することができると言うべきである。

五  これらの諸事実を総合勘案すると、被告人は、本件犯行当時被害妄想、情動不安定状態にあつたとはいえ、右妄想は一過性のものであり、確固とした妄想体系が構築され、これによつて被告人の全人格が支配されていたとまでは認め難く、被告人には自己の行動を選択できる能力、すなわち、被害妄想、情動不安定状態に合法的な方法で対処することができる能力がなお残されていたにもかかわらず本件犯行に及んだのは、被告人の短絡的で反社会的な性格傾向の影響によるものと考えられる。そうすると、被告人の右のような精神状態は、本件犯行の動機形成に重要な役割を果した点において、被告人の事理を弁識し、これに従つて行動する能力を著しく制約していたが、それ以上に右能力を失わしめる程の影響力はもたなかつたものと認めるのが相当である。

以上要するに、被告人は、本件犯行当時覚せい剤中毒後遺症の症状再燃による被害妄想、情動不安定状態による精神障害のため心神耗弱の状態にあつたものであるが、心神喪失の状態にまでは至つていなかつたものと認められる。

(量刑の理由)

本件は、刑務所を出所した直後の被告人が、ホテルの廊下において、偶々被告人の部屋の前を通りかかつたにすぎない何の面識もない被害者に対し、突如出刃包丁で襲いかかり、その貴い一命を奪つたという極めて兇悪な犯行であるところ、犯行の態様をみても、全く無警戒・無防備の状態にあつた被害者の背後から、その身体の枢要部を出刃包丁で力まかせに突き刺し、更に悲鳴を上げ助けを求めて逃げようとする同女を追いかけ、同女が動かなくなるまで文字通り滅多突きにし、更に、被告人の隙を見て包丁を取り上げようとするホテルの警備員に突きかかつてその左上腕部を突き刺し、同人に加療約三週間を要する左上腕内側刺創の傷害を負わせているのであつて、誠に残虐で執拗、冷酷な犯行であると言うほかない。また、全く落度がないにもかかわらず、いきなり包丁で襲われ思いもかけない非業の死を遂げた被害者の無念の情は察するに余りあり、その遺族は被告人に対し厳重な処罰を求めていること、被告人は、被害妄想・情動不安定状態の下で本件犯行に及んだものであるとはいえ、前記認定のとおり、本件は多分に被告人の性格傾向に基づくものと言えるのであり、更に覚せい剤中毒後遺症も自らが招来した結果であるとの側面も否定できず、その意味で動機の点においても酌量の余地に乏しいこと、被告人の当公判廷における供述態度等に徴すると、被告人の本件犯行に対する改悛の情は甚だ不十分であると言わざるを得ないこと、本件は前記前科による服役出所の翌日に行なわれたものであることなどを併わせ考えると、その犯情は悪質であり、被告人の刑責は極めて重いと言つてよい。

したがつて、被告人の友人が、当公判廷において被告人の今後の更生に協力する旨供述していること、被告人の生育環境、家庭環境には恵まれない一面も窺われることなどの事情を最大限に考慮しても、被告人に対して主文掲記の量刑は已むを得ないものと判断した。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 新谷一信 大澤廣 村田渉)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例